新変異株、「オミクロン株」 (B.1.1.529) について

編集: セルスペクトテクニカルディレクターズオフィス  2021年11月29日

 新型コロナウイルスの新しい変異株 「オミクロン株」 (B.1.1 .529) が、11月12日に南アフリカで検出され、WHOはわずか2週間でこの変異株を「懸念すべき変異株(VOC)」に指定しました。

以下、検査に与える影響等、弊社の調査内容と見解をまとめます。

① なぜオミクロン株は科学者たちに強く懸念されるのか?
 オミクロン株が注目される理由は、細胞内へのウイルス侵入、免疫逃避、感染性増大などに重要な働きを持つスパイクタンパク質 (Sタンパク質)に、合計32個も変異を有しているからである(図1)。これら32個の変異の中には、これまでの変異株で認められた重要な変異も多数含まれている。例えば、P681HとN679K、H655Yの変異はウイルスが体内の細胞に侵入しやすくする可能性が懸念されている。また、R203KとG204Rの変異や、アルファ株やベータ株にも認められたN501Yという変異は感染力を高める可能性が指摘されている。この他、ウイルスの伝播性を高めることが懸念されるNSP6、ワクチンを回避しやすいベータ株に類似したK417NとE484A、免疫抗体の効果低減に関連したN440KとS477N(これらはベータ株やニューヨークの感染拡大の一因となった)など、数多くの変異がオミクロン株では確認されている。

 多数の変異を有するオミクロン株の病原性・感染性などの特徴はまだ完全には明らかにはなっていない。しかしながら、南アフリカとボツワナで最初に発見され、南アフリカ北東部のハウテン省で確認された症例数は過去2週間で急速に増加し、現在では優勢な変異株となっており、その伝播能力を過小評価できないことを示している。
 

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図1. SタンパクとACE2受容体複合体X線結晶構造解析図
オミクロン株で認められるSタンパクの変異の部位を、紫色の球体で示している。

② 現行のPCR検査はオミクロン株を検出できるのか?
 現在のPCR検査では、この変異株を問題なく検出できる。PCR検査では、通常複数のマーカーがセットで検査されるため、変異によって一部のマーカーが使えなくなったとしても、他のマーカーで検出できる。現在、PCR検査で広く用いられているマーカーセットでは、オミクロン株を検出できることが確認されている。むしろ、一部のマーカーが検出されないことを利用して、オミクロン株の同定に使用されている。

③ オミクロン株の重症化リスクは?
 オミクロン株は11月12日に南アフリカで初めて検出され、主に若者に感染が広がった。高齢者やワクチン未接種者で重症化するかどうかはまだ不明であり、これを分析するためにより多くの臨床情報を蓄積する必要がある。例えばアルファ株またはデルタ株の場合、この情報の取得に約2か月かかった。

④ オミクロン株に対するワクチン、モノクローナル抗体医薬品や経口薬の有効性は?
 既存のコロナワクチンのほとんどはウイルスのSタンパク質を標的としているが、オミクロン株のSタンパク質には32種類の変異がある。ベータ株、デルタ株などに関する情報から、ワクチンの有効性は多かれ少なかれ影響を受けることが予想されている。ワクチン製造会社は、すでにオミクロン株に対する検証を始めており、およそ2週間以内には、ワクチンに対する大まかな影響が明らかになる見込みである。南ア国立感染症研究所(NICD)の見解では、オミクロン株に対しては、ワクチンによる感染防御効果は弱まるものの、重症化や死亡に対しては高い予防効果をもたらすはずと考えている。
 また、オミクロン株は、モノクローナル抗体医薬品が作用するターゲットである、Sタンパク質の受容体結合ドメイン (RBD) に多くの変異を有する。このため、モノクローナル抗体医薬品は、オミクロン株に対して効果が低下する可能性があり、実際の臨床情報の蓄積・分析が必要である。経口薬は、ワクチンやモノクローナル抗体医薬品とは作用するターゲットが全く異なるため、影響は少ないと考えられる。しかし、これも追跡調査によって確認される必要がある。

⑤ オミクロン株に対する世界の対応
 オミクロン株の確認以降、ウイルスの拡散防止のための移動制限が各国で始められている。米国は11月29日、南アフリカなど8カ国からの旅行者の入国を制限し始め、できるだけ早く追加のワクチンを接種するよう国民に求めた。欧州連合は南アフリカの7カ国の人々に旅行制限を課すことを提案している。イスラエルは、すべての国からの入国を禁止する予定である。日本においても、外国人の新規入国を全面的に停止し、日本人の帰国に際しても厳格な隔離措置を実施することが政府から発表された。

 引用文献:​

  1. WHO“Classification of Omicron (B.1.1.529): SARS-CoV-2 Variant of Concern”

  2. 27 Nov, 2021, “Why is Omicron so scary?” Mail Online News

  3. 26 Nov, 2021, “CDC Statement on B.1.1.529 (Omicron variant)”

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