Vol.7  「デジタル技術を活かした新型コロナウイルス感染症との戦い」

2021年3月4日 最終更新 Cellspect Co., Ltd

(注意:より専門的な内容については“(→ )”内に記載しました。こちらは、読み飛ばしてください。)

 

 新型コロナウイルスとの戦いにおいて、医療システムは要です。感染が拡大するにつれ、そのデジタル技術は、明らかにこの病気に対する新たな戦いの場となりました。デジタル技術で感染拡大を防ぐことはできませんが、感染拡大を予測し、その対処法を予見したり、警告したり、現場の医療者が状況を把握することに役立ちました。これにより、パンデミックの影響は大幅に減らすことができました。昨今では、モバイル、クラウド、ビッグデータ、ロボット工学、AI (人工知能)/ML (機械学習)およびウェアラブルデバイスのような統合技術の出現により、いくつかの革新的な方法を試してみることが可能になりました。 今号は、デジタル技術が重要な役割を果たしている分野にフォーカスしてみましょう。

 

・医療への支援(日本国外のエピソードも含んでいます)

 現在、新型コロナウイルス検査において、誤診率を下げ、医師の負担軽減のために、コンピュータ断層撮影 (CT) 画像を分析するAIツールが使われております。AIとビッグデータは、医療資源の配分や、病院の収容能力、医薬品の分配、病歴による患者の識別などを含む意思決定の指針においても重要な役割を果たしています。米ジョンズホプキンス大学公衆衛生学部の研究チームは、ビッグデータ分析を活用した新型コロナ感染症の死亡リスクの計算ツールを開発しました。このツールは、どのグループの人が最初にワクチン接種を受けるべきかの手引きとして利用されています。米スクリプス研究所(生物医療科学の研究と教育を行っている非営利の医療研究施設)は、心拍数、睡眠パターン、皮膚温度などの生理学的データを組み合わせて、新型コロナウイルス感染症を早期に感知できるウェアラブルデバイス(身体に装着するデバイス)について発表しました。米ニューヨーク大学の研究チームは、新たに新型コロナウイルス感染症と診断された患者のうち、重症化を正確に予測できる人工知能アルゴリズムを開発しました。このように、AIは新型コロナウイルス感染症の治療にも大きく貢献し、多くの製薬会社がワクチンや治療薬の開発にAIを使っています。(→AIを薬物スクリーニングの補助に利用しています。例えば、EVQLVというスタートアップ企業は、何億もの治療用抗体をコンピュータで生成、スクリーニング、最適化できるアルゴリズムを開発しています。彼らのMLアルゴリズムを用いて、成功率が高い治療用抗体を迅速にスクリーニングすることができます。)

 

・デジタル疫学調査

 今日では、デジタル技術を用いて、政府機関がさまざまなリアルタイムの公衆衛生データを使用し、疾患の危険因子を特定し、効果的な介入が可能になりました。例えば、英国とシンガポールでは、オンラインの症状報告システムを導入しました。これは患者の見守りに利用されていますが、患者隔離に関するアドバイスや、高度医療機関への転院に関するアドバイスも提供しています。このようなサービスは、公衆衛生情報として、患者隔離などの具体的行動につなげることができます。公衆衛生当局のミッションとして、感染者が隔離された後、濃厚接触者を迅速に追跡し、さらなる感染拡大を防ぐ必要がなければなりません。特に感染率が高い地域では、このモニタリングと介入が重要です。そこで、デジタル接触追跡ソリューションが登場しました。デジタルツールなしでは再現できないスケールとスピードで濃厚接触者の追跡を自動で行えます。(→これにより、当局によるリコールへの依存度が低下しますが、これは人口密度が高く人の移動が多い地域では特に問題となります)。デジタル接触追跡アプリは今や世界中に広まっています。しかし、これらの新しいテクノロジーは、これほど大規模に試みられた経験がなく、個人情報保護の観点から議論を呼んでいます。

 

・ビジネス・教育の変革

 パンデミックのために、世界中の学校が閉鎖されています。その数は、累計で12億人以上と試算されています。また、多くの企業は、通勤や社会との接触を減らすために、従業員に在宅勤務やリモート業務を求めています。その結果、デジタル・プラットフォーム上で授業を行うe-ラーニングやビデオ会議が急速に発達、普及し、ビジネスや教育分野へのIT化が劇的に進みました。ある調査によると、オンライン学習は学習内容の定着率を向上させ、教育時間を短縮することが示されています。つまり、パンデミックにより、もたらされた新しいこのような新しい様式は、その価値が高いことが実証されたため、収束後の世界でも継続して利用されることでしょう。さらに、この感染症により、様々な国において、情報入手の平等性と適時性も加速されました。米ジョンズホプキンス大学システム科学工学センター (CSSE) では、世界中の症例をリアルタイムに統合するプラットフォームを構築し、世界中で利用されています。各国でアップロードされたウイルス遺伝子配列をリアルタイムに解析するオープンプラットフォーム「世界共通インフルエンザ・データイニシアティブ」 (Global Shared Influenza Data Initiative:GISAID) も、国境を越えた研究や解析のための資料となります。米ホワイトハウス科学技術政策局は、138,000もの新型コロナウイルス感染症に関する学術論文を公開しました。リソースの共有や世界中の科学者にAI分析の利用を呼びかけることで、新型コロナウイルス感染症の分析を加速させたいと考えています。世界最大の学術出版社であるエルゼビア社も、31,000本以上の学術論文を無料で提供しています。

 

・ロボットの様々な用途

 他人との接触を減らすために、受付スタッフの代わりにロボットを使う機関がますます増えています。特に病院では院内感染の観点からロボットを使う方が安全と言われています。インドでは、ルワンダの病院にロボットが持ち込まれ、検温や医療記録の保管などの作業を行うことで、医師が患者と接触する時間を減らすことができました。イタリアのポロクリニコ・アバノのチェーン病院では、患者の病室の消毒にUVDロボットを使用しています。(→このロボットは病院内を自律的に移動し、紫外線を照射してウイルスを死滅させることができます)。さらに別の例として、ソフトバンク製のロボットであるPepper(ペッパー)があります。ペッパーは、かわいいだけでなく、人間と対話することができるように設計されています。 ペッパーは、小売業、金融業、サービス業、観光業、さらにはヘルスケアなど、さまざまな業界で活用されています。パリのピティエ=サルペトリエール大学病院に患者が家族と連絡を取り合えるように、4台のペッパーが貸し出されました。ペッパーには、ビデオ電話を表示できるタブレットが搭載されています。ペッパーは、電話の最中であれ、その前後であれ、隔離された患者に前向きで楽しい経験を提供することができます。また、ドローンが医療サンプルや医療用品の輸送に利用され、患者教育用メッセージを空輸するためにも利用されています。

 

 本号ではデジタル技術をどのように利用できるかについて、ごく限られた例のみを紹介しました。もし、いま、デジタル技術がなければ、新型コロナウイルス感染症の世界的流行は全く異なる形をとっていたことは明らかです。技術革新はあらゆる業界に影響を与え、世界中の企業は、そのアプローチを見直し、新しいソリューションに投資し、将来影響を及ぼす可能性のある同様の危機に備えています。

 引用文献:​

  1.  Karol Przystalski. 15 Dec 2020. “Technology Against COVID-19: IT Solutions for Fighting the Pandemic” CODETE News.

  2.  Manjunath B S. “Covid-19: 8 ways in which technology helps pandemic management” ETCIO news.

  3.  Respective company news release

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