Vol.6  「免疫記憶による、ワクチン効果持続への期待」

2021年2月25日 最終更新 Cellspect Co., Ltd

 突然あらわれた新型コロナウイルスと、その感染拡大は、ワクチン開発を加速し、既に約200のワクチン候補が開発されました。一般的にワクチンは臨床現場に届くまでには、何年もの研究・開発と臨床試験を必要としますが、感染拡大を食い止めるために、研究者たちは安全かつ効果的なワクチン開発と接種を、これまでにない速さで急いでいます。世界保健機関 (WHO) の統計によると、これまでに1億5900万回以上の接種が世界76カ国で行われました。新型コロナウイルスへの再感染をどのくらいの期間防げるか、またどのような免疫過程が関与しているかが、感染拡大の今後を予測する鍵となります。

 これまで行われたいくつかの研究により、「新型コロナウイルスに対する免疫がどれだけ持続するか」に関して、新型コロナウイルス感染症罹患者の抗体価が、感染からわずか2カ月後には激減していたことがわかっています。一部では、これらの人々は再感染しやすく、長期間効果が持続するワクチンの開発は困難で、広範な集団免疫獲得はできないのではないか、との心配があります。

 しかし、ヒトの免疫記憶は抗体だけで構成されているわけではないため、抗体価から想像されているよりも、ずっと強力かもしれません。人体が特定の病原体による脅威にさらされた後、現在は直面していない場合(即ちいったん感染したが、回復し今は感染していない状態)は、その病原体に対抗する抗体は大量に体内に存在する必要がありません。免疫系の記憶細胞 (Tリンパ球やBリンパ球など) がいったん作られると、必要なときに必要に応じて、新しくその特異的抗体を迅速に作ることができます。さらに、免疫記憶はNK細胞(ナチュラルキラー細胞)によっても確立されます。NK細胞はハプテンまたはウイルスに反応し、抗原特異的記憶細胞を産生します。したがって、特異的な、新型コロナウイルス抗体の数が著しく減少したからといって、新型コロナウイルスからの再感染に対する迅速な防御ができないわけではありません。むしろ、関連する抗体の減少は、単に「今は必要ではない」ということです。

 幸いなことに、免疫記憶が長期間持続することを示す新たな研究が最近いくつか発表されています。科学誌「Science」に掲載された研究によると、新型コロナ感染症から回復した人のほとんどが、再感染を防ぐ免疫記憶を少なくとも8ヵ月間持続していることが分かりました。この研究は、免疫記憶の4つの構成要素(血中を循環する抗体、メモリーB細胞、ヘルパーT細胞、およびキラーT細胞)すべてが測定されているので、これまでのところ、全ての急性感染症に関する最大規模の研究として知られています。科学誌「Nature」に発表された別の研究結果では、新型コロナ感染症に対するメモリーB細胞の反応は、感染後6ヵ月まで持続する可能性があると結論づけています。中和抗体価は経時的に低下しましたが、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合ドメインに特異的なメモリーB細胞は、感染後最長6カ月間持続していることが発見されました。これらのメモリーB細胞は、中和能力および守備範囲の広さが大きい抗体を生成することさえできます。

 これら2つの研究は、科学誌「Science Immunology」に発表された以前の研究とも一致する結果を示しています。メモリーB細胞は新型コロナ感染症発症後急速に増加しました。感染初期、メモリーB細胞は主にIgM抗体を作りました。時間が経過すると、メモリーB細胞が作るIgG抗体の割合が明確に増加しました。この変化はB細胞が成熟する正常な過程を反映しています。B細胞が本来産生するIgM抗体もウイルスを中和することができますが、その中和効果は必ずしも最良のものではなく、成熟過程において、B細胞は遺伝的変異を介して中和抗体や抗原の親和性を調節し、抗原に対する親和性が高く中和能の強いIgG抗体を産生します。さらに、メモリーB細胞、特にIgGを産生するメモリーB細胞のレベルは、本研究では症状発症後200日以上安定していました。

 免疫記憶は再感染の予防に関与しており、これらの研究によりワクチンがもたらす予防効果が長期間となる可能性についてのエビデンスを提供してくれます。これら研究の結果は有望ですが、この感染拡大は単純なものではありません。新型コロナウイルスに対する免疫応答のスペクトルの広さは、ワクチンに対する応答の範囲の広さを意味します。全ての人が同レベルの予防接種を受けられるわけではなく、まったく接種を受けられない人もいます。さらに、高齢者の免疫反応は子どものものとは異なるなどの理由で、万能ワクチンを作るのは難しいと言えます。ワクチンが効果的な免疫をもたらすかどうかという課題は、より多くの臨床試験によってのみ解決できます。世界中の研究者は、発症後の患者の長期間の免疫反応を追跡するために、新型コロナウイルス感染症を発症した患者から採取されたサンプルの分析を継続して行っています。

 引用文献:​

  1. World Health Organization: WHO https://www.who.int/

  2. Jennifer M. Dan et al. 06 Jan 2021. “Immunological memory to SARS-CoV-2 assessed for up to 8 months after infection” Science.

  3. Christian Gaebler et al. 06 Jan 2021. “Evolution of antibody immunity to SARS-CoV-2” Nature. 

  4. Gemma E. Hartley et al. 22 Dec 2020. “Rapid generation of durable B cell memory to SARS-CoV-2 spike and nucleocapsid proteins in COVID-19 and convalescence” Science Immunology.

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