COVID-19の免疫応答/炎症メカニズムの

詳細分析および治療法

2020年6月19日最終更新 Cellspect Co., Ltd

 最新刊の Nature Reviews Immunology 誌に掲載された論文で、シンガポールA*STAR研究所の科学者が新型コロナウイルス感染症(COVID-19) を引き起こす SARS-CoV-2 感染の病態生理学の概要を説明している。

 

 研究者らは、SARS-CoV-2 と免疫系との相互作用と、その後の疾患進行に対する免疫応答の機能不全について次のように述べている。SARS-CoV-2 感染と肺細胞の破壊は、一連の局所免疫応答を誘導し、マクロファージと単球によるサイトカインの放出、主要な適応性T細胞およびB細胞の免疫応答を誘導する。ほとんどの場合、このプロセスによって感染の終息を得ることができる。 しかしながら、いくつかの症例で、重度の肺損傷および全身性の病理学的反応の原因となる、免疫反応の機能不全を生じる。

 

 「SARS-CoV-2 感染の病態生理はSARS感染の病態生理と非常に類似しており、激しい炎症反応が、結果として生じる気道損傷に強く関与している。したがって、患者の疾患重症度はウイルス感染だけでなく宿主反応にもよって決まる。年齢とともに重症度が増大するパターンも、SARS および MERS の疫学とほぼ一致している。」と著者は述べた。     

 

 COVID-19 の発症後約1週間で、患者の血液から SARS-CoV-2 に対するT細胞およびB細胞の免疫応答が検出可能となる。CD8+T (細胞傷害性T細胞)は感染したウイルスを直接攻撃し殺すことができる一方、CD4+T (ヘルパーT細胞)は CD 8+T とB細胞の機能活性化のために必須である。CD4+T は免疫細胞を動員し、サイトカインの産生にも関与している。COVID‐19 患者の最初の剖検報告は、肺に単球が蓄積し、末梢血中の高活性T細胞レベルが低いことを示した。さらに、患者体内のリンパ球および末梢T細胞のレベルが低下したことも報告された。関連する研究結果では、T細胞は血液から感染部位に入り、感染制御のために動員されることが示されている。これは、COVID-19 患者としては、T細胞枯渇の増加とその機能的多様性の減少が、疾患の重症度を示すこととなる。患者としての症状は抑えられるが、COVID-19 から回復した患者は依然としてコロナウイルス特異的記憶T細胞を発現した。     

 

 COVID-19患者のB細胞応答は、発症後約1週間で、しばしばヘルパーT細胞応答と同時に起こる。SARS感染患者では、通常、ヌクレオカプシドタンパク(Nタンパク質)反応に対するB細胞応答が最初に現れる。発症後4~8日以内に、Sタンパク質に対する抗体反応が現れる。中和抗体反応は2週目に始まる。ほとんどの患者は3週目に中和抗体を有する。SARS-CoV-2のウイルス力価はSARSよりも早くピークに達するため、抗体反応が早く現れることがあり、SARS-CoV-2に対する抗体を持続的に産生しない患者もいると考えられるが、現時点では、これらの患者が再び感染するかどうかは不明であるとしている。この抗体はSARS-CoV-2に有効である可能性が高い。回復期患者の血清サンプルはCOVID-19の臨床応用において有望な結果を得ており、以前SARSの事例においても、回復期患者の血清が治療にも使われて成功している。  

 

 ほとんどの患者では、動員された細胞が肺の感染を除去し、免疫応答が消失し、患者は回復する。しかしながら、一部の患者では、免疫反応の機能不全が起こり、致死的な COVID-19 症例の28%で死亡の原因となる広範な肺炎および敗血症の症状を媒介するサイトカインストームを引き起こした。これらの症例では、コントロールされていない炎症が多臓器障害を引き起こし、臓器不全が、特に心臓、肝臓および腎臓系に発生する。この論文の著者は、「病院での集中治療を必要とする重症 COVID‐19 の患者は、 IL‐2、IL‐7、IL‐10、顆粒球コロニー刺激因子 (G‐CSF)、IP‐10、MCP 1、マクロファージ炎症性蛋白質1α (MIP 1α) および腫瘍壊死因子 (TNF) の血漿濃度がより高いことが観察された。これらの患者におけるIL-6レベルは経時的に増加し続け、非生存者では生存者よりも相対的に高い。」と述べている。「特に、重度の COVID-19 患者の気管支肺胞洗浄液中には、高度に炎症性の単球由来のFCN1+マクロファージ集団が存在する。また、重度の患者では、末梢血中の CD14+、CD16+ 炎症性単球の割合が軽度の患者より有意に高い。これらの細胞は、MCP 1、IP-10、およびMIP 1αを含むサイトカインストームに寄与する炎症性サイトカインを分泌する。」  

 

 著者はまた、薬物に加えて SARS‐CoV‐2 に対するいくつかの潜在的な治療アプローチを次のように結論した:

  1. ACE 2 受容体および/または TMPRSS 2 プロテアーゼの遮断

  2. Sタンパク質または TMPRSS 2プロテアーゼの標的化

  3. 抗体と回復期血漿療法  

 

 簡単に述べれば、SARS-CoV-2 は、そのSタンパク質(スパイクタンパク質)を宿主細胞のACE 2受容体に結合することによって細胞に入る。さらに、セリンプロテアーゼTMPRSS 2 は、ACE 2 を切断し、Sタンパク質を活性化して感染プロセスを促進させる。ACE 2 および TMPRSS 2 の遮断は、他の多くの適応症に対して臨床的に認められている。Sタンパク質を標的とするモノクローナル抗体もまた、ウイルス侵入または融合を阻害し得る。また、代替戦略として、標的宿主細胞へのウイルス侵入を減少させることができると考えられる、高濃度の可溶化したACE 2を投与する方法がある。中国では、病院が COVID-19 の治療のための治療用ポリクローナル抗体の原料として、回復期血漿の使用を開始しており、初期のデータは、呼吸器ウイルス量および死亡率に対する正の影響を示唆している。これらについて、多くの臨床試験が進行中であり、良い結果が出ることが期待されている。  

 

 レビューの最後に著者らは、「炎症反応を制御することは、ウイルスを抑えることと同じく重要である。ウイルスの感染防御や、免疫応答の機能不全を制御する治療は、様々なステップで病態を抑えるための相乗的な効果を有する可能性がある。また同時に、COVID-19 の患者における免疫機能障害と疾患重症度との関係は、ワクチンの開発および評価において注意すべき点である。さらに、SARS‐CoV‐2 に対する宿主免疫応答のさらなる研究、具体的には免疫システムが正常に機能するか、もしくは機能不全に至るのかを決定する要因の詳細な研究、が必要である。これらはまた、患者の効果的なトリアージに活用可能な、感染防御と疾患重症度に相関する免疫反応を指し示す、バイオマーカーの同定に役立つ。」と結論づけた。

 引用文献:

  1. Matthew Zirui Tay et al., 28 April 2020 “The Trinity of COVID-19: Immunity, Inflammation, and Intervention” Nature

   Reviews Immunology, volume 20, pages363–374 (https://www.nature.com/articles/s41577-020-0311-8)

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