《Nature誌》:英・南ア変異株にワクチン効果が低い可能性

2021年3月19日 最終更新 Cellspect Co., Ltd

 新型コロナウイルス変異株に関する質問が週ごとに増えている。最大の疑問の1つは、新規変異株が、感染者が体内で作った中和抗体に対し異なる反応を示すかどうかである。この感染症と戦うための現在の治療法やワクチンの効果に変化を与える可能性があるため、この点を理解することは重要である。

 

 さて、コロンビア大学で最近行われた研究によると、2種の新型コロナウイルス変異株B.1.351およびB.1.1 .7 (南アフリカとイギリスでそれぞれ最初に発見された)は、実験室での実験において抗体中和に対する抵抗性の増加を示すことが示唆されている。これらの知見は、現在のモノクローナル抗体療法やワクチンが、ウイルスのいくつかの変異型に対して効果が低い可能性があり、新たな変異株は再感染の可能性が高いという懸念を引き起こすことを示唆している。

 

 この研究はNature誌2021年3月8日号に発表され、18種のモノクローナル抗体、20名のCOVID-19回復者の血漿、22名のワクチン接種者の血清を用いてウイルスを中和する能力が評価された。本研究の主著者であるDavid Ho氏らは、Moderna社やPfizer社製ワクチンを接種した人から採取した血液サンプル中の抗体は、昨年9月に英国で出現したB.1.1 .7と、2020年後半に南アフリカで出現したB.1.351の2つの変異株を中和するのにあまり効果がないことを発見した。中和能は、英国の変異株に対して約1/2に低下、南アフリカの変異株に対して1/6.5~1/8.5に低下した。

 

 B.1.1 .7変異株は、スパイクタンパク質のN末端ドメインを標的とするモノクローナル抗体による中和に耐性があり、受容体結合ドメインを標的とするいくつかの抗体に対して比較的耐性があった。N末端ドメインに対する抗体による中和に対する抵抗性に加えて、B.1.351変異株は、主にE 484 K変異に起因するスパイクタンパク質の受容体結合モチーフを標的とする治療に現在使用されている一群のモノクローナル抗体に対しても抵抗性であることが判明した。COVID-19回復者の血漿およびワクチン接種を受けた人々の血清の中和活性は、この変異株に対してそれぞれ約1/9および1/10~12に低下した。本研究からの予測は、Novavax社ワクチンの最初の報告結果により裏づけられつつあると、David Ho医師は述べている。1月28日、同社は英国での試験では90%近い有効性を示したが、南アフリカでの試験では49.4%の有効性しか示さなかったと報告した。南アフリカでの試験では、コロナの症例のほとんどがB.1.351変異株によるものであった。

 

 本研究では、ウイルス受容体結合ドメイン(RBD)を標的とする12種の抗体と、N末端ドメイン(NTD)を標的とする6種の抗体からなる18種の異なるモノクローナル抗体を使用した。 12種のRBDモノクローナル抗体のうち、イギリス変異株の場合、開発中の2つの抗体の中和活性はわずかに損なわれていたが、ほとんどの抗体は依然として強力であった。しかし、南アフリカ変異株の場合、LY-CoV555(米国で使用が承認されたEli Lilly社の抗体)を含む5つの抗体の中和能力はほぼ完全に消失していた。 Regeneron社二重抗体カクテル療法REGN-COVのCasirivimabは、米国によっても認可されているが、南アフリカ変異株を中和する能力もほとんど失っている。ただし、別の抗体imdevimabは、その能力を維持している。 2つの完全な抗体カクテル療法も効果的である。さらに、6つのNTDモノクローナル抗体はすべて、英国および南アフリカ変異株に対する効果が低いことを明らかにした。

 

 この研究結果は、現在のモノクローナル抗体療法に修正が必要でであることを意味する。この研究には最近発生したブラジルB.1.1 .28変異株は含まれていないが、ブラジルおよび南アフリカ変異株には類似のスパイクタンパク変異があることから、ブラジル変異株の結果は南アフリカ変異株と類似する可能性があると研究者らは考えている。治療法の決定は、南アフリカおよびブラジル変異株の地域有病率に大きく依存し、ウイルスゲノム監視および次世代抗体療法を積極的に開発することの重要性を強調している。

 引用文献:​

  1. Pengfei Wang et al., 08 Mar 2021" Antibody Resistance of SARS-CoV-2 Variants B.1.351 and B.1.1.7 " Nature.

  2. 09 Mar 2021. “SARS-CoV-2 Variants B.1.351 and B.1.1.7 Show Resistance to Neutralizing Antibodies” Genetic Engineering and Biotechnology News. 

  3. 08 Mar 2021. “New Study of Coronavirus Variants Predicts Virus Evolving to Escape Current Vaccines, Treatments” Columbia University Irving Medical Center.

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