ナノ粒子型ワクチン:汎用コロナワクチンでパンデミック

終息の可能性

2021年2月19日 最終更新 Cellspect Co., Ltd

 通常10年を要するワクチン開発だが、新型コロナウイルスワクチンは数カ月のうちに開発され、医学史の中でも画期的な出来事として記録されることになるだろう。しかしながら、新型コロナ変異株の症例が急増し、今後さらに多くのコロナウイルスアウトブレイクが発生する可能性や、変異株がワクチンの効果に与える影響について心配され始めている。ワクチンメーカーの中には、自分たちのワクチンはまだかなり効果的だと主張しているところもあるが、なかには予防効果が不十分なワクチンもあることが判明している。すべてのコロナウイルスに対して作用するワクチンがないものか、疑問に思わずにはいられない。

 

 研究者たちも、新型コロナのパンデミックを完全に制御することを望み、そのような汎用コロナウイルスワクチンの開発に情熱をそそいでいる。 幸いなことに、カリフォルニア工科大学、オックスフォード大学、ロックフェラー大学が主導した最近の研究では、マウスを使った実験で、ナノ粒子ワクチンが免疫反応を引き起こし、新型コロナウイルスを含むさまざまなコロナウイルスに抵抗できることが確認された。 関連する研究結果がScience誌に掲載された。 [1]

 

 この研究で使われたワクチン技術は「モザイクナノ粒子」と呼ばれるもので、60個の同一タンパク質でできた籠のような形状をしており、各籠に小さなタンパク質タグが付いていて、それがマジックテープのように機能する。モザイクナノ粒子は、異なるコロナウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合領域 (RBD) をナノ粒子籠構造と混合することを可能にする。各ウイルスタグは籠上のタグに付着することにより、その表面に異なるコロナウイルススパイクに似たナノ粒子を生じた。[1]

 

 研究者らは、4種類のナノ粒子ワクチンを作製した。1つは新型コロナウイルスのRBDのみを示す同型粒子であり、他の3つは新型コロナウイルス、コウモリおよびセンザンコウから分離されたコロナウイルスを含む4種類または8種類のコロナウイルスRBDを示すモザイク粒子である。接種後、マウスが産生した抗体は多くの異なる株のコロナウイルスに反応した。ここで重要なことは、抗体は、ナノ粒子上に存在しないコロナウイルスの関連株に対しても反応したことである。このことは、免疫系に複数の異なるコロナウイルス変異体を提示することにより、免疫系はコロナウイルスの共通の特徴を認識することを学習し、したがって、新たに出現したコロナウイルスに潜在的に反応する可能性があることを示唆する。さらに、モザイク粒子(混合ワクチン)は、同型粒子と比較して、新型コロナウイルスに対する抵抗性が弱まっていなかった。

 

 「SARS-CoV-2が、パンデミックを引き起こす最後のコロナウイルスになる可能性は低い。我々の結果は、注入されたナノ粒子に表されなかったコロナウイルス株に対してさえ、多様な中和抗体応答を高めることが可能であることを示している。そのため、この技術を使い、将来新たに動物のコロナウイルスが人間に感染するようになっても、身を守ることができると期待している。さらに、ナノ粒子は新型コロナに対する中和反応を誘発するため、新型コロナやパンデミックの可能性がある他のコロナウイルスから身を守るためにナノ粒子を使用できる可能性がある。」と、本研究のリーダーであるBjörkman氏は述べた。 [2]

 

 研究チームはこの現象の根底にあるメカニズムをまだ研究している最中だが、結果は有望である。ナノ粒子ベースの新型コロナワクチンには多くの利点がある。安くて、安全で、効果的である。現在入手可能なワクチンよりも保管・輸送が容易である。世界中で現在開発されている新型コロナワクチンの中には、複数のコロナウイルスに同時に耐性を持つワクチンの開発を目指し、同様の戦略を採用している企業もある。例えば、米国のVBIワクチンは、その「エンベロープウイルス様粒子」技術プラットフォームを使用し、同時に新型コロナウイルス、SARSウイルスおよびMERSウイルスから身を守ることができるワクチンVBI-2901を開発した。動物実験では、ワクチンは上記の3種のウイルスに対する抗体を刺激するだけでなく、産生された抗体はワクチンに存在しないヒトコロナウイルスOC43 (一般的な感冒を引き起こすコロナウイルスの1つ)に反応することもできる。現在、このワクチンは今年後半に第1/2相臨床試験を開始する予定である。

 引用文献:​

  1. Alexander A. Cohen et al. 12 Feb 2021. “Mosaic nanoparticles elicit cross-reactive immune responses to zoonotic coronaviruses in mice” Science

  2. 12 Jan 2021. “Nanoparticle Immunization Technology Could Protect Against Many Strains of Coronaviruses” California Institute of Technology News Release.

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