新型コロナ感染症罹患中の変異株出現リスクに着目した研究

2021年2月12日 最終更新 Cellspect Co., Ltd

 世界中に新型コロナが広がりながら進化していくのを注視しており、新規変異株がパンデミック拡大の重要な要因となっている。しかし、1回の感染でどのようにウイルスが進化するのかはまだ謎のままだ。最近の研究は、ある免疫抑制 (免疫系の機能が低下している)患者の感染経過中のウイルスゲノムを解析することによって、この疑問の解を見出した。Nature誌に掲載されたこの論文によると、ケンブリッジ大学の研究者らが率いるチームは、回復期患者の血漿で治療された免疫不全患者で、どのように新型コロナウイルスの変異が観察されたかを報告している。この患者自体が発生源とは示唆されていないが、英国が再び厳格なロックダウンを強いられることになった新しい変異株に通じる変異が見られた。[1、2]

 

 この研究では、治療中に23回、免疫不全患者からウイルスを採取した。患者は70歳代の男性で、2012年に辺縁帯B細胞リンパ腫と診断され、各種の化学療法を受けていた。男性は2020年夏に三次病院に入院し、入院35日前には地元の病院で新型コロナウイルス陽性を示していた。胸部CT像には新型コロナウイルス感染症による肺炎と一致する異常が見られた。

 

 101日間にわたって23検体のウイルスゲノム比較を実施した。最初の57日間にレムデシビルの治療コースを2回受けた後の全ウイルスの構造にはほとんど変化が観察されなかった。

 

 しかし、CT撮影後、ウイルスの大きな動的シフトが66~82日の間に生じ、優勢なウイルス株がスパイク蛋白質のサブユニット2におけるD796H変異とサブユニット1のNTDにおけるΔH 69/ΔV 70欠失を有するようになった。

 

 86および89日目には、82日目に観察された欠失‐変異対は10%以下の頻度に低下し、ウイルスは代わりにスパイク蛋白質においてY200HおよびT24 Iが変異した株が優勢となった。

 

 ウイルス量を減少させるための最後の治療として、93日目に3回目のレムデシビル治療コースを行い、95日目にCP療法の第三用量を投与したところ、D796H+ΔH69/V 70ウイルスが再出現した。[3]

 

 これらデータにより、回復期血漿治療とウイルス変異体の出現との強い相関が明確で、回復期血漿治療後に出現するスパイク変異体は中和抗体能を損なう。著者らは、この所見に基づき、血漿療法後にこの変異ウイルスの頻度が繰り返し増加することは、観察された突然変異が他の変異よりも生存優位性を持っている可能性があることを示していると考えている。本研究は、免疫低下患者における新型コロナウイルス変異の動的過程と、それにより中和抗体の感受性を低下させることを初めて明らかにした。免疫低下を示す感染患者は、新型コロナウイルスの変異株の重要な供給源となる。研究者らはまた、この現象は免疫力の低い感染者にのみ当てはまることを強調した。免疫力が強い患者は、免疫制御が良好であり、ウイルス多様化の可能性は低いであろう。同時に、この研究は、低免疫で新型コロナ感染症に罹患した患者の治療方法を微修正する必要があることも示している。

 引用文献:​

  1. Steven A. Kemp et al. 5 Feb 2021. “SARS-CoV-2 evolution during treatment of chronic infection” Nature

  2. 8 Feb 2021. “The Evolution of SARS-CoV-2 in a Single Patient” Genetic Engineering and Biotechnology News.

  3. Sally Robertson. 11 Feb 2021. “SARS-CoV-2 evolves antibody resistance in immunocompromised patient” Medical Life Science News.

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