英国の新型コロナ変異株に関して

明らかになっていることは何か

2020年12月25日 最終更新 Cellspect Co., Ltd

 ウイルスゲノム解析によりSARS-CoV-2新規変異株が同定されたとの報告が、2020年12月14日に英国当局からWHOに対して行われた。12月18日に発表された分析結果によると、この変異株の最初のサンプルは、9月20日にケントで、また9月21日にロンドンで発見された。[1] 英国の仮報告では、この変異株は、これまでのウイルスに比較して感染力が高く、伝搬のしやすさが40%から70%増加していると推定している(基本再生産数 R 0を0.4増価させ、この値が1.5から1.7の範囲となる。) [2]

 

 現在は「SARS-CoV-2 VOC 202012/01」 (Variant of Concern 202012/01)、「SARS-CoV-2 VUI」(Variant Under Investigation in December 2020)、あるいは 「B.1.1 .7」 と呼ばれている。この新しい変異株は、23ヶ所の変異を含み、そのうちの17個はウイルスを形成するタンパク質の構成要素に関連している。これほど多くの突然変異が一度に現れることは珍しい。この変異株は、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン (RBD) の位置501に最も重要な変異を有し、アミノ酸のアスパラギン (N) がチロシン (Y) に置換されている。この突然変異の略号はN 501 Yであり、これによりウイルスはヒト細胞とさらに強く結合できるようになる。この変異は、南アフリカで急速に感染拡大している別系統の変異体にも出現している。この変異株には他にも多くの変異があり、特筆すべきは以下の通り:

• 69/70欠失:この二重欠失は複数回自然発生しており、おそらくスパイクタンパク質の立体構造を変化させる(言い換えると、コンフォメーションチェンジ)。

• P 681 H:S 1/S 2フーリン切断サイトの近く、コロナウイルスの変異性の高い部位。この突然変異も複数回自然発生している。

• ORF 8終止コドン (Q 27 stop):この変異はスパイクタンパク質ではなく、別の遺伝子(オープンリーディングフレーム8)にあり、その機能は不明である。過去に同様の突然変異が起こっている。シンガポールで、このタイプの変異を持つ1株が出現し、消失した。[2、3]

 

 SARS-CoV-2は定期的に変異しており、2週間ごとにゲノムにおおよそ一ヶ所の新しい変異を獲得する。中国の武漢で最初に発見されたウイルスは、世界のほとんどの地域で見られるものと異なっている。D 614 G変異は2月にヨーロッパで出現し、世界的に優勢な型のウイルスとなった。もう1つはA 222 Vと呼ばれるもので、ヨーロッパ中に広まり、スペインの夏休みの感染拡大と結びついた。WHOのリスク評価によると、VOC 202012/01が他のSARS-CoV-2変異体よりも重篤な疾患を引き起こすという証拠はない。従って今はパニックになる必要はない。しかしながら、WHOは、この新しい変異ウイルスが、現在行われているいくつかの診断検査では検出されない可能性があるという懸念にも注目している。ほとんどの市販PCR検査は、ウイルス検出のため複数の標的をもち、突然変異によりいずれかの標的に影響を与えても、他のPCR標的は依然として機能する。[1−3]

 

 もう一つの問題は、このウイルスがワクチンによる免疫を回避するかどうかである。これが起こっているという証拠はなく、ほとんどの専門家は、ウイルスの性質上、エスケープ変異体が出現する可能性は低いと考えている。さらに、FDA承認済ワクチンは「ポリクローナル」であり、スパイクタンパク質のいくつかの部分を標的とする抗体を産生する。ワクチンや感染により誘導される免疫を回避するためには、ウイルスはスパイクタンパク質に複数の変異を蓄積する必要がある。[2、4]

 

 突然変異がウイルス特性に与える影響、またこれが診断、治療やワクチンの有効性に与える影響をより完全に理解するために、さらなる研究が必要である。これらの研究は複雑であり、時間が必要で、また異なる研究グループ間の協力が必須である。パートナーとの全ゲノム配列情報共有により、詳細な解析が容易となる。WHOのSARS-CoV-2 ウイルス変異ワーキンググループは、英国の研究者と協力し、これまで得られた結果をさらに深く理解し、さらなる研究を支援している。[1]

 引用文献:​

  1. 21 Dec 2020. “SARS-CoV-2 Variant – United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland” WHO Disease Outbreak News

  2. 22 Dec 2020. “Implications of the Emerging SARS-CoV-2 Variant VOC 202012/01” CDC News Release

  3. 22 Dec 2020. “Covid: New variant found ‘due to hard work of UK scientists’” BBC News

  4. 22 Dec 2020. “What We Know About The New U.K. Variant Of Coronavirus — And What We Need To Find Out” npr News release.

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