Nature誌「今年の10人」を発表、新型コロナ関連で7人を選出
2020年12月18日 最終更新 Cellspect Co., Ltd
2020年も終わりを迎える12月15日、科学誌Natureは今年のサイエンスストーリーで大きな役割を果たした10人のリスト「今年の10人 (Nature's10)」を発表した。 10人中7人は、世界中で150万人以上が死亡した新型コロナウイルスと戦う研究者や公衆衛生の専門家による前例のない取り組みを行ったパンデミックに関連した人々だ。「今年の10人」とその業績・活動は次の通り。
1. Tedros Adhanom Ghebreyesus:世界に警告
世界保健機関 (WHO) Tedros Adhanom Ghebreyesus(テドロス)事務局長は、新型コロナウイルスの脅威に対応するために各国を結集する一方、危機へのWHOの対応に対する激しい批判をかわした。
2. Verena Mohaupt:極地パトローラー
北極圏の国際的なミッションのためのドイツの兵站責任者であるVerena Mohaupt氏は、彼らの船が一年間海氷に閉じ込められている間、約300名の研究者をホッキョクグマや極端な寒さ、彼ら自身から守るために働いた。
3. Gonzalo Moratorio: コロナウイルスハンター
ウルグアイのウイルス学者Gonzalo Moratorio氏は、同僚と協力しウイルス診断法を開発し、ウルグアイでの感染と死亡の連鎖を回避するのに役立った。
4. Adi Utarini: 蚊の司令官
インドネシアの公衆衛生研究者Adi Utarini氏は、デング熱の原因となるウイルスの伝播を阻止するために、人口繁殖させた蚊を使い、デング熱感染と闘うための先駆的な実験を主導した。
5. Kathrin Jansen: ワクチンのリーダー
世界的に迅速なワクチン開発が求められる中、米製薬企業ファイザー社でワクチンの研究開発責任者を務めるKathrin Jansen氏が率いるチームは、ワクチンを過去最短の210日間で臨床試験に成功させ、世界に希望をもたらした。
6. Zhang Yongzhen: ゲノム共有者
武漢でコロナウイルスが大流行した初期の数日で、中国のウイルス学者Zhang Yongzhen(張永振)氏と彼のチームはウイルスのRNA配列を迅速に決定し、直ちに情報を公開した。
7. Chanda Prescod-Weinstein: :物理学の力
米宇宙学者Chanda Prescod-Weinstein氏は、武装していない黒人男性ジョージ・フロイド氏がミネアポリス警察に殺害された後、研究機関における組織的な反黒人人種差別への意識を高める目的で、6月に研究所閉鎖の一日を作るために他の研究者と協力した。
8. Li Lanjuan: ロックダウン設計者
中国の疫学者Li Lanjuan(李蘭娟)氏は、武漢におけるCOVID-19大流行の脅威を直ちに認識し、祝日前に市を封鎖するよう中央政府を説得し、ウィルスの拡散を遅らせた。
9. Jacinda Ardern: 危機のリーダー
国民の信頼を維持しつつ、Jacinda Ardernニュージーランド首相がとった、コロナウイルスから国を比較的安全に保つための迅速で断固たる行動が、国際的に高く評価された。
10. Anthony Fauci: 科学の擁護者
米国立アレルギー感染症研究所Anthony Fauci所長は、米国政府のコロナウイルス対策の顔となり、トランプ大統領が広めた誤った情報に異議を唱える一方で、関係する人々に信頼できる情報を提供した。
Nature誌2020年「今年の10人」には、世界中から様々な人が集まっている。注目すべき発見をしたり、重大な問題に注意を向けたり、物議を醸す行動で悪名を馳せたりしたかもしれない。これは明らかに賞やランキングではない。代わりに、関係者の説得力のある人間的な話を通じ、科学の世界の重要な出来事を強調している。同時に「今年の10人」に掲載された個人の物語を語ることで、世界中の科学者が発見・発明・革新の旅を続ける中で行ってきた取り組みの歴史を記録することができる。
引用文献:
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15 Dec 2020. “Nature’s 10: ten people who helped shape science in 2020” Nature.
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16 Dec 2020. “Nature’s 10 people who helped shape the science stories of 2020” Springer Nature. Media release.