スタンフォード大開発のCRISPRテストは

30分でCOVID-19を検出

2020年11月20日 最終更新 Cellspect Co., Ltd

 スタンフォード大学の研究者たちは、COVID-19を検出するCRISPRベースの「Lab On a Chip」を開発し、自動車メーカのフォードと共同でプロトタイプを作成、ほぼ市場に出せる製品にまで完成させた。​これにより、コロナウイルス検査結果を30分以内にどこにでも送信できる、自動携帯デバイスが供給される可能性がある。​[1、2]

 CRISPR (Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)は今年度ノーベル化学賞を受賞した技術で、革命的な遺伝子の「はさみ」と呼ばれている。​ CRISPRに基づく診断法は、高い汎用性、感度および特異度のある診断方法であり、COVID-19パンデミックの渦中において、大きな関心を集めている。​CRISPR検査は、SARS-CoV-2に特有の約20塩基長のRNA配列を同定することにより行われ、標的RNA配列に相補的な 「ガイド」 RNAを産生し、サンプル溶液中でこれに結合する。​ガイドが標的に結合すると、「はさみ」酵素のスイッチがオンとなり、近くに存在する一本鎖RNAを切断し、別途混入させた蛍光粒子をサンプル溶液中に放出する。​サンプル溶液にレーザ光を当てると、放出された粒子が蛍光を発することにより、ウイルスの存在を知らせる。

 5月6日、Sherlock Biosciences社は、コロナウイルスの遺伝物質を検出するCRISPRベース検査キットの緊急使用承認 (EUA) を最初に取得した。​次いでMammoth Biosciences社が、8月31日にCRISPRを用いたプロトコールおよび試薬一式のEUAを取得した[3、4]。CRISPRを用いたアッセイは、COVID-19診断法の精度面でのゴールドスタンダードであるPCR検査と同程度の精度を持つといわれている。​しかしながら、既存のCRISPR診断法は、核酸抽出をまず行う必要があり、大量の試薬が必要で、またいくつかの用手法のステップが必要であり、すなわち長いプロセスとなり、リソースがあまりない場所では使用しづらい。[4]

 ​PNAS誌に最近発表された今回の研究は、複雑な流路を持つクレジットカードの半分の大きさしかないマイクロ流体チップ上で、感染を迅速かつ安価に検査できるとしている。​電場を利用して鼻腔拭い液からサンプルを精製し、システムのマイクロ流路内にDNA切断試薬を送り込む。​有名なCRISPR-Cas 9の兄弟である、CRISPR酵素Cas 12を用いることで、コロナウイルス由来の遺伝物質が見つかった時にサンプルを発光させる蛍光分子プローブを誘発する。​研究者らによると、CRISPR酵素を別の遺伝子マーカに再調整することで、この検査法を他の感染症の検出に変更することもできるという。​「他の疾病を検査したい場合は、コンピュータ上で適切な核酸配列を設計し、そのデータをRNA合成メーカに電子メールで送信すると、その疾病の検査をすることができる試薬分子をバイアルに入れて送り返してくれる」 と、本研究の筆頭著者であるRamachandran氏は述べた。[1、2]

 

 この新しい検査法には、サンプル中のウイルス量を定量できるという、もう1つの重要な利点がある。​標準的なコロナウイルス検査では、ウイルスの遺伝物質を増幅して検出するため、存在する遺伝物質の量が変化し、サンプル中のウイルスの量を正確に定量することができない。​言い換えれば、蛍光シグナルはサンプル中のウイルス量に比例し、サンプルが陽性であったかどうかだけではなく、患者がどの程度のウイルス量を持っていたかも明らかにすることができる。​この情報は、各患者の状態に合わせた治療法を医師が決定することに役立つ。​[5]

 引用文献:​

  1. Conor Hale, 06 Nov 2020. “Stanford develops CRISPR 'lab on a chip' for detecting COVID-19” FIERCE Biotech news.

  2. Ashwin Ramachandran et al., 04 Nov 2020. “Electric field-driven microfluidics for rapid CRISPR-based diagnostics and its application to detection of SARS-CoV-2” PNAS.

  3. Julia Joung et al. 08 Oct 2020 “Detection of SARS-CoV-2 with SHERLOCK One-Pot Testing” N Engl J Med. 383(15):1492-1494

  4. Anjani Shah et al. 05 Oct 2020 “COVID-19 Testing Gets Crisper with CRISPR-Based Diagnostics” Future Lab press.

  5. Robert F. Service 08 Oct 2020 “New test detects coronavirus in just 5 minutes” Science daily newsletter.

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