RNA抽出不要のCOVID-19 RT-PCR迅速検査法が開発された
2020年10月2日 最終更新 Cellspect Co., Ltd
世界中で大流行している新型コロナウイルスは、現在少なくとも100万人がCOVID-19で死亡している。[1] トランプ米大統領は9月28日(月)、数百万回分のCOVID-19迅速検査を各州に配布する計画を発表し、この検査を学校再開に利用することとしている。[2] この比較的高い感染率と多数の無症候性感染を特徴とする新型コロナウイルスに対して、臨床および非臨床の現場で実施可能な、迅速で効果的な検査が世界中で大いに必要とされている。先日Nature Communicationsに掲載されたカロリンスカ研究所の発表によれば、RNA抽出不要で実施可能なCOVID-19のRT-PCR法が報告されており、この新しいCOVID-19検査法は安価で迅速かつ正確であると期待されている。[3]
現在広く用いられている、RT-PCR法によるCOVID-19診断検査では、RT-PCRを実施する前に、患者試料(鼻および咽喉スワブ)中のウイルスRNA分子を抽出・精製しなければならない。RNA精製は検査プロセスの主要なボトルネックであり、高価な試薬と多くの設備、また高度なロジスティックスを必要とする。
熱不活性化直接RT‐PCR (hid‐RT‐PCR:heat-inactivated direct RT-PCR) と名付けられたこの方法は、単一反応で熱不活性化または溶解された試料に対して直接実施することが可能であり、高額で複雑な試験手順の単純化と、診断のスケールアップを実現した。597例の臨床患者サンプルと標準化された診断システムを用いたベンチマークを含む彼らのデータは、彼らの直接RT-PCR法が、RNAを抽出する通常のRT-PCR検査を代替可能であることを示している。現在行われている複雑な検査手法を、その精度を著しく損なうことなく単純化することは、より多くの、より迅速な検査を行うことができることを意味し、これにより感染率の低下、初期ケア容易化の一助となることが期待される。
カロリンスカ研究所の部門横断的な研究グループによって開発された新しい方法では、一度患者のサンプルを加熱することで、ウイルス粒子の感染性を不活化するとともに、RNA抽出手順を完全に回避し、直接RT-PCR(ウイルスの存在を検出する診断反応)に進むことが可能である。研究者らによると、この方法が成功するための最も重要な鍵は、上記のウイルス不活化手順と、試料を患者から採取し輸送するために使用する溶液の新しい処方の2つである。「検体輸送液を、簡単で安価な緩衝液製剤に置き換えることにより、中間ステップなしで、試料から直接高感度にウイルス検出することを可能にした。」と主任研究者であるReinius博士は言う。[4, 5]
この方法は低コストかつ単純であり、限られた資源しかない場所や状況で特に魅力的である。この方法により、各種リソースを、高価な検査から、医療の他の部分に振り分けることにも役立ち、繰り返し検査可能なことも同様に興味深い。また無症状者を定期的に安価に検査することにより、感染拡大を防ぐことも期待できる。
引用文献:
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Rachael Rettner, Sep 28, 2020. “Trump administration plans to distribute 100 million rapid COVID-19 tests to states” LiveScience news
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Ioanna Smyrlaki et al. Sep 23, 2020. “Massive and rapid COVID-19 testing is feasible by extraction-free SARS-CoV-2 RT-PCR” Nat Commun. 11(1):4812.
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Prachi Mankani. Sep 27, 2020. “Sweden Develops New Covid-19 Testing Method, Promises to Be Cheaper, Faster and Accurate” Republicworld news
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“A cheaper, faster COVID-19 test” Karolinska Institute’s press release